パンデミックと新自由主義(杉村昌昭)

中国は、建前はどうであれ、世界的に見たら、いわば多くの面で〈権威主義的新自由主義国家〉という様相を呈している。そして、国内における強権発動装置を備えた〈市場社会主義〉がこれを支えている。この中国国家の現状と、今回の〈新型コロナ・パンデミック〉に対する欧米諸国の行政権力の対応とを重ね合わせてみると、そこに興味深い共通性が浮かび上がってくる。すなわち、そこには似通った “民衆管理” の姿が立ち現れてくるのである。言い換えるなら、多くの欧米諸国が(もちろん日本も)、「コロナ対策」にかこつけた統治手法として――欧米諸国の行政権力がどこまで自覚しているかは別として――中国の強権的な民衆管理の手法を採用しているということである。感染が広がりはじめた初期に行なわれた「ロックダウン」(日本では「緊急事態宣言」)、さまざまな行動制限、最近ではワクチン接種の事実上の義務化など、マスメディアの報道によって醸成されたコロナウィルスに対する人びとの恐怖心をテコとして採用された民衆統制は、欧米諸国がことあるごとに批判してきた中国政府の “非民主主義的民衆管理” そのものの様相を呈している。